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慢性腎不全と猫生活 [治療]

小春どうぶつ病院  院長です。

今日はトラ猫の「シマ ちゃん」をご紹介したいと思います。

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待合室の様子 「キョロキョロ」といろんなものを観察しています。

「シマ ちゃん」は19歳のネコちゃんで『食欲不振』と『貧血』を主訴に来院されました。

オーナー様がこれまでの『血液検査』の結果をお持ちいただいたため、これまでの経過を詳しく知ることができました。

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来院初日は身体検査上、「重度の脱水」が認められましたが、「貧血」という所見は見られませんでしたので、血液の検査を実施しました。

結果は前回(半年前)のデーターよりも腎不全が進んでいました。

血液検査の結果だけで考えれば「入院点滴」治療の適応なのですが、高齢ということと「外泊」が苦手であるということを考慮し、オーナー様との相談の結果「通院」+「皮下補液」で治療を進めていくことになりました。

ただし、「脱水」が生命の危険に及ぶほど重度であることや、血液検査のデーターから連日通院してもらいました。

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治療中 「うむっ」っと我慢していますが、「涙が出ちゃう」ので優しいお母さんに拭いてもらっています。

「皮下補液」としてはかなり大目の量を注射した1日後には「ご飯を食べるようになった」

と言うことでオーナー様も喜んでおられました。

3日間連日注射をしたところで採食量も増え、元気も出できたのでこれからは定期的(最低でも週に2回)に「皮下補液」に通院することにしてとりあえずの治療終了としました。

その後も定期的に通院され、一時期は減少していた体重も増加はしないものの現状維持されています。

時間を割いて高頻度「動物病院」に通うオーナー様の努力の賜物です。


慢性腎不全は高齢のネコちゃんでは多い病気です。

ほぼ全てのと言ってもいいくらいのネコちゃんは高齢になると多かれ少なかれ「腎臓」の機能が下がってきます。

腎臓の細胞が再生能力を持たない為、一度下がった腎機能は元には戻りません。

したがって、残った腎機能で今後は状態を維持していかなくてはなりません。

それにはオーナー様のご理解や、ご協力が欠かせません。

この病気のネコちゃんを抱える飼い主さんの献身さには毎回頭が下がるような思いを抱きます。

 

少しでもネコちゃんの体を楽にしてあげる手助けができたらなぁと思います。

 

ここで少し慢性腎不全についてお話しておきたいと思います。

大きく分けて「腎不全」には「急性腎不全」と「慢性腎不全」があります。

読んで字のごとく「急性」は急になる腎不全で「急死」してしまうことがあります。

そして、「慢性」との大きな差は、治療がうまくいけば「腎機能」が「回復」することです。

つまり、「慢性腎不全」は今後「機能回復」は望めません。

慢性腎不全の治療や管理において重要なことは「早期発見」です。

特にネコちゃんでは年齢とともに腎臓の細胞が壊れていってしまうケースが多く、「腎不全」の兆候が見られた段階で、残っている細胞をいかに保持していくかが治療のポイントです。

ただし、この腎不全の兆候を発見することが難しいことが現在の医療の課題でもあります。

一般的な「動物病院」で行える検査で一番最初に検出できるものは「尿比重」です。

これはその個体がどれだけ尿を濃くできているかを検査する項目です。

次は「血液性化学検査」になります。

ただ、これらの検査で腎不全の兆候が引っかかってくるようになった段階で、「腎機能」は70~80%ほど失われてしまっています。

近年、尿中微量蛋白測定法などいろいろ新しい検査が研究されていはいますが、一般の「動物病院」で行われるほどにはいたっていないのが現状です。

では、70%近くの腎機能が失われた状態からどのような治療法があるかというと

食事療法 リンの含有量が少ない食事にする方法

投薬  慢性腎不全が進行していくとともに高血圧も進行していくケースが多いため、血圧をコントロールする薬や、腎臓の血管を拡張して効率よく腎臓が働けるようにする薬を飲む

吸着剤 活性炭などの体の不要なものを吸着してくれるものを飲む

体液補正 点滴や皮下補液などの注射で体に水分を補給していく

といった方法があります。

中でも「食事」に関しては初期段階から「低リン食」に変更することで寿命が延びるというデーターがあることや、投薬に比べてストレスが少ないことから個人的には一番重要だと考えています。

「体液補正」は最終的に必要になってくる治療です。

これが必要になった個体は今後も定期的なケアが必要になります。

ここまで病気が進行してしまった個体に関しては、すでに食欲が低下しているケースが多いため、ここからの食事変更が困難であるか不可能であるケースが多いです。

食べてくれるなら何でもいいから何とか食べてほしい

というのが本音ですね

ある程度の年齢になったら定期的に健康診断を受けていただくなど「早期発見」につとめましょう。


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